「大和田警察の者です」
『アルプス商事』と書かれた作業着を着た男はサッと警察手帳を見せ、サッとしまった。
「もう一度見せてもらえますか?」
「ああ・・・分かりました」
(なんかこのやりとり、見覚えがあるな・・・)
もう一人の異様にガタイのいい男も見覚えがある。
警察手帳をじっくり見て、写真と本人を見比べる
「宮田さんですね」
「先日はありがとうございました。」
「ああ、あの時の!」
優子のバカ旦那の時の警官二人だ。
「住民票と戸籍が欲しいのですが・・・」
と、大量の『捜査関係事項照会書』が提出された。
「こんなに・・・?」
「すいません。関係者が多いもので・・・」
パラパラとめくると、水田の名前も。
「少しお待ちください」
数が多いので美香と丸井にも手伝ってもらうことにした。
「なんか変・・・。」
すべての戸籍がフィリピン人がらみ。夫または元夫は50代から70代。そして、小さな子ども。
伴沢は、もう一つ奇妙な共通点を見つける。
(ほとんど全部同じ住所を経由してるな・・・)
15世帯分ほどの住民票と戸籍を渡すと、アルプス商事とガタイのいい二人はお礼もそこそこ、そそくさと帰っていった。
「あやしすぎますね・・・」
丸井は何度も首をかしげる。
「警察はなにか掴んでいるんだろう。課長には報告しなくていいから」
「・・・・分かりました」
(もしもの時は、しっかり責任を取ってもらいますからね、課長)
視線の先の江口は、何も気が付いていない様子だった。
伴沢は倉庫にいた。
さっきの警察の請求した戸籍の情報を元に、出生届を探しに来ていた。
戸籍の届出書は本来であれば本籍地のある法務局に送付する。だから原本は市役所にはない。
しかし、大和田市の住民課は代々、届出書のコピーを保管していた。
(さすが、石橋を叩いて叩き壊す大和田市役所だぜ!)
届出書のコピーは何の意味もなく、保管義務もない。
届出書は受付番号順に整理されているが、段ボールにぎっしりと詰まっていて引っ張り出すのに一苦労。倉庫自体が狭いため、段ボール自体が何段にも積まれ、一つ一つが重い。
(やっぱり小澤を連れてくるべきだったか・・・。腰がやられそうだ)
なんとか、15枚を見つけ、一つ一つ確認すると
「これはさすがにヤバいな・・・」
その届出書には、伴沢の嫌な予感を裏付ける共通点が・・・。
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