むらた部長のマネジメント実践塾&公務員ドラマ「伴沢直稀」

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第2話 天赦日(てんしゃにち)に消えた婚姻届⑥「本名」【公務員ドラマ 伴沢直稀~俺たち就職氷河期入庁組~】

 初めての方は第1話①からお読みください

 

 「あらー、若菜ちゃんじゃな~い、どうしたのかな~?」

どこから声を出しているのかわからないぐらい気持ち悪い声。

声の主は田中だ。

さすが趣味が地下アイドルの男だ。丸井を見た瞬間に田中の方から声をかけてきた。

鼻の下が伸び切っている。同期で一番の堅物の面影は・・・そこにはない。

 

「田中。このナンバー照会したい」

「なんだよ、伴沢も一緒かよ」

田中は元の地声に戻る。

男と女でここまで態度に差があるものか?

「そんな言い方してると丸井さんに嫌われるぞ」

 

アイドル好きには清楚系女子。前回の丸井に対する田中の反応を思い出して、丸井を連れていくことにした。

作戦としては褒められたものではないが、ヤバい案件だから仕方がない。

 

相手の車が軽自動車でよかった。軽自動車税は市町村税だからナンバー照会が市役所内でできる。普通車は都道府県税だから市役所にデータはない。

といっても、誰でもデータが見られる訳ではない。所有者を照会するには正当な理由がいる。通常、住民課が軽自動車の所有者を尋ねる理由はない。

 

「はいはい。これね・・・。今、印刷するから」

あっさりでてきた。

近隣市も同じ地元ナンバーだから、空振りの可能性もあったのだが。

「一応、聞くけど、この前の市長案件のつづきか?」

「・・・ん、ま、そんなところだ」

「たいへんなんだな、住民課も」

「税務課には及ばんよ」

相手が勝手に勘違いしてくれたので、適当に話を合わせておく。

『石橋を叩いて叩き割る、堅物の田中』であったらナンバー照会は不可能だっただろう。

 

丸井が「違います」と言ったら面倒なことになりそうだったが、事前に、「隣でニコニコしていてくれればいい」と指示をだしたのが正解だったようだ。

 

「伴沢」

ふいに田中に声をかけられる。

耳を貸せというジェスチャー

 

「何?」

「・・・若菜ちゃんと飲みに行きたいなぁ」

 

はあ?

「・・・知らん」

「知らん、てなんだよ。同期なんだからなんとかしてくれよ」

「・・・知らんものは知らん」

・・・それとこれとは別だ。

 

 

「若菜ちゃん、また来てね~」

気持ち悪い声に丸井の顔が引きつっているように見えた。

 

 

階段を降りると丸井の笑顔が完全に消える。

「・・・なんで私の下の名前知ってるんですか?」

「俺は教えてないぞ。職員名簿で調べたんだろ」

「気持ち悪すぎて、ムリです」

たしかに、あんな声で呼ばれたら伴沢でもかなり嫌だろう。

この手は次は使えないな。

 

 

「係長、相手の男まで特定しちゃったんですか?そこまでやる必要ないっスよ」

サイテー男がもっともなことを言う。

確かに、婚姻届を返却したことが分かった時点で住民課としての仕事は終わりだ。婚姻届は出されていないのと同じ。

 

だけど、それで事件は解決?

 

「再発防止には婚姻届を回収した理由を聞かないとな」

「・・・それ、別に要らないっスよ」

 

 

「マニュアル見直しは進んでいるのか?」

「いっそがしいんっスよ、オレ。もっと暇そうな人に頼んでもらえます?」

「小澤より暇なヤツは住民課にはいないよ」

さすがの伴沢もイヤミの一つ返したくなった。

「課長とか・・・暇そうっス」

まあ、確かに・・・小澤と江口はいい勝負かもしれん。

「受付マニュアルの見直しは戸籍担当の仕事だ。暇じゃなくてもやっておけ」

 

 

 

そして伴沢は住基を叩く

田中からもらった紙には「内田悠太」の文字。

(内田は本名か・・・意外だな)

結婚詐欺師であればまず偽名を使うはずだ。騙そうとする相手に本名を名乗るようなマヌケな詐欺師はいない。

登録は8年前。新車購入から乗っている。使用者も所有者も同じ。

当然、住所は市内。

 

「まったく訳が分からないな・・・」

一応、もらった情報が住基と一致するか確認する。

 

「内田悠太」で検索。

 

数秒後。

 

内田の住基を開いた伴沢は愕然とした。

 

 

 

 

(つづく)

 

 

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