その時!
「オレは関係ないって言ってるだろ!」
店の外から大声が聞こえてきた。
外をみると『アルプス商事』の作業服!
さっきの警察官!!
もう一人のガタイのイイ方もいる。
そして、
・・・別のガタイのイイ男が一人。
「あ!優子さんの旦那さん!!」
・・・あれが・・・内田か!
ふたりはあわててぽんぽこ山を出る。
「離せ!!」
アルプス商事が腕を掴もうとしたのを振り払った勢いで、もう一人のガタイがイイ警察官の顔面をHITさせてしまった!
「・・・・」
しばらく沈黙。
そして、ガタイがイイ方が「署までご同行願おうか」
内田はこくりとうなずき、そのままパトカーに乗せられてしまった。
そのやりとりを見ていた伴沢と美香。
「行っちゃいましたね・・・」
「結局、話は聞けなかったか・・・」
ふたりは店の中に戻り、終始無言でぽんぽこブレンドと普通のブレンドを飲んでいた。
後日。
優子が住民課に来た。
「ちょっと聞いてよー。ウチの旦那、警察のお世話になっちゃってさー」
警察にお世話になった話をしようとする割に明るい。
その顔を見ただけで、ホッとした伴沢。
伴沢の予想したとおり、結婚詐欺のような類ではなかった。
麻沙美が内田のサイフからキャッシュカードを抜き取り、銀行口座を特定して勝手に300万円を振込んだらしい。
警察に呼び出されるまで自分の口座に300万円が増えたことを知らなかったようだ。
要するに、合コンで「独身」とウソをついて、そのまま本当のことが言えずに婚姻届提出までお付き合いしてしまった、ということらしい。
『結婚している時に婚姻届を出してもどうせ無効だろう』と内田悠太は深く考えずにいたのだが、あまりにはしゃぐ麻沙美の姿を見て、『ちょっとまずいかな』と思って回収たようだ。
「ねー。バカでしょー、ウチの旦那」
笑い話のように話してるが、当事者の前では笑えないよな・・・。
伴沢は作り笑いのような苦笑いで終始聞き役に回っていたが
「これからどうするの?浮気したってことだよね?」
「まー、今回が初めてじゃないし、よっぽど慰謝料たっぷりもらって別れてやろうかって思ったんだけどねー」
「別れないの?」
「バカ旦那が、『どうしても優子じゃないとダメだ』って泣いて土下座するからさー。
まだ子どももちっちゃいし」
「許しちゃうんだ」
「住民課に離婚届持ってくるのもねー。元住民課職員のプライバシーなんてあってないようなもんだからね」
あー、そこ気にするか・・・。
「いつまで続くか分かんないけど、もう二度と合コンには行かないって言うし、『オレには優子しかいない』とか言っちゃうし、私もなんだかんだで好きなんだよねー。」
なんかノロケ話になってないか?
「優子さーん」美香の声。
「旦那さん、警察に捕まって大変だったんじゃないんですか?」
「拘置所で一晩過ごして反省したみたいだよ」
「でも、優子さんが死刑にするんでしょ?」
おいおい。
「もう、過去に3回ぐらい死刑にしたから大丈夫。美香ちゃんも変なことされなかった?うちの旦那に?」
「え?」
・・・そこまで知ってるのか。恐ろしい。
優子の寛大さと恐ろしさに感心している伴沢に、また事件が訪れる・・・。
「係長、この住民票、発行してもいいですか?」
丸井が困った様子で話しかけてきた。
(第2話完、第3話へつづく)
※ この話はフィクションです
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