むらた課長のマネジメント実践塾&公務員ドラマ「伴沢直稀」

40代でヘッドハンティングされた元公務員が、異色のキャリアでマネジメントを語ります。ライトノベルにも挑戦!

第1話 Gカップ職員と毎日住民票を取りに来る青年④「エロ課長」【公務員ドラマ 伴沢直稀~俺たち就職氷河期入庁組~】

 初めての方は第1話①からお読みください

 

 課長にケーキの報告をするのが先か、秘書課への折り返しが先か迷った伴沢であったが、

(市長を待たすのはまずいな)

先に秘書課に連絡するように伝えることにした。

 

市長が呼んでいる、と伝えると、江口は動揺した。

タイミングが悪い。

窓口で発狂していたド派手な美魔女が『市長に会わせろ』と叫んでいた直後である。

「伴沢君!大丈夫なのか?」

「・・・さあ」

「さあ、じゃないだろ?そういうことをしっかり把握して報告するのが君の仕事じゃないのか?」

上野に『何で市長が呼んでいるか?』と聞いたところで教えてはくれないだろう。上野も上から指示を受けているだけだ。

さっきの件とは関係がないかもしれない。

「あまり待たせるとよくないと思いますが」

「ああ、そ、そうだな。次からはしっかり内容を把握するように」

と言いながら内線をかける江口。電話の相手に甲高い声で「はい、はいっ」と返事をしながら何度も大きく頭を下げる。まさに、ペコペコ。

市長が直接、課長からの内線に出ることはないのだが。

(相手は市長じゃなくて上野なんだよな・・・)

下に強く、上に弱い。だんだんこういうタイプの管理職が増えてきた。

(ま、課長になるのも大変なんだな)

 

 

 

「係長!」

美香に呼び止められる。

明らかに怒っている。

 

「丸井さんから聞きました。ちょっとヒドくないですか??」

隣では丸井がまた泣きそうになっている。

「美香さん、ごめんなさい」

 

怒るのも無理はない。

「反省しているんだから、許してやってくれないか」

「丸井さんは反省してるんですけどね・・・」

チラッと見る先は市川たち。

「ああ、わかった。オレから注意する」

・・・あの嘱託軍団を注意するのはかなりの難問だ。

 

「それで、どうするんですか?」

まだ案はない。

「課長が市長に呼ばれているから、その結果待ちだな」

「え?市長に?」

「さっきのトラブルが関係しているか、分からない。いまは課長の帰りを待つしかないさ」

 

 

 

 

 あまりにくだらないトラブルだが、対応を間違えるとまずいことになりそうだ・・・伴沢は、対策を練っていた。

  ー取り合えず、さっきの派手なオバちゃんと美香のところに通っていた男が親子ってことは間違いなさそうだな。

相手は電話番号を渡したつもりになっているけど、こっちはすでに廃棄済みか・・・。

幸い、住所は分かる。(住民課だから)

美香に好意があるってことは、そこを潰さないと長引くかもしれない・・・。

しつこい男は一人でもやっかいなのに、母親つきである。

「・・・菓子折り持って謝りに行くしかないか・・・」

「私も行きます!」

伴沢は独り言を丸井に聞かれてしまったことに気が付く。

「ありがとう。対応は考えておくから、何かあったらよろしく」

丸井の真面目さは他のメンバーに見習って欲しいものだ。

 

 

 

そんな時に江口が戻ってきた。

たぶん、寄り道していたのだろう。江口が席を外すといろんな部署で油を売っていることは実は有名である。

「伴沢君!丸井さんをしっかり指導するんだよ。あ、でも指導し過ぎはだめだ。丸井先生のお孫さんだからね!」

(知ってますよ)さっきまで顔が引きつっていたのに、なんだこの上機嫌は?

「彼女の勤務態度は真面目ですから、大丈夫ですよ」

「丸井先生が市長に直々に『孫の様子はどうだ?』と言っていたらしい。私も預かる身として気が引き締まるよ!」

(今まで窓口を放置していたのに、調子のいいこと)

伴沢はあきれるしかなかった。

実は以前、上野がコッソリ教えてくれたことがあった。

どうやら丸井が元議長の孫であることを、採用試験が終わるまで人事は知らなかったらしい。市長のところに元議長が、『うちの孫が今度採用された』と言ってはじめて気が付いたという。

伴沢は、職員の身の上話など興味はない。コネ採用のうわさは知っていたが、丸井は仕事ぶりでウワサを跳ね返せる筈だ。

「トラブルが市長の耳に入ってなくてよかったですね」

「ああ、これからもノートラブルで頼むよ」

いやいや、トラブルがないんじゃなくて、トラブルを上層部が見て見ぬふりをしているだけだ。

・・・この課長に『ケーキ食べちゃいました』とは言えないな。

 

 

 

 

 

その日の夜。

繁華街の路地にある小さなスナックに初老の男が現れた。

「あら、もう来てくれたの?」

「顔を見たからには行くしかないだろ」

「じゃあ、毎日市役所に行っちゃおうかな」

「おいおい、そんなに暇じゃないぞ」

「だって、市長になってから1回も店に来てくれないじゃない」

 

(つづく)

 

 

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