立会外分売が多めの投資情報と雑感と雑談

日本株の分売情報が多め、あとは米国株と政治の話や雑感【旧・むらた部長の「おはよう!諸君!」~投資とマネジメント】

第1話 Gカップ職員と毎日住民票を取りに来る青年⑧「スナック容子」【公務員ドラマ 伴沢直稀~俺たち就職氷河期入庁組~】

 初めての方は第1話①からお読みください

 

伴沢に心の中を見透かされてしまった江口は、前日のスナックでの出来事を全て話すほかなかった。

 

「江口課長、サイテーです」

丸井はハッキリ言う。今の若い女の子は怖いな・・・伴沢は心の中で苦笑いしていた。

「市長の意向だから、なんとかしてくれないか」

ほんの少し前の威勢は消え、新人の女性職員にお願いするしかなくなってしまった。江口の目には、女性新人職員というより、丸井元議長の孫にしか見えていないのかもしれない。

「本当に市長は『二人を引き合わせろ』と言ったんですか?」

伴沢は、いくらスナックのママと親密だったとはいえ、そんな要求を市長が飲むとは思えなかった。

「あ、ま、まあ、そうだな。ハッキリとは言わなかったが・・・」

「課長の忖度ってことですか?」

「あ、いや、そういうわけでは・・・」

「ハッキリしてください!課長!」

丸井がビシッと言う。叱りつけているかのようだ。課内全員が振り向く。

新人が課長に叱咤しているようだ。

「あ、す、すまない・・・。」

江口はしどろもどろになっていた。

「私じゃなくて美香さんに謝ってください!!」

・・・本当に今時の女子はおっかない・・・。伴沢は可笑しくて笑いをこらえるのに必死だった。

 

 

 

 

「いらっしゃい」

薄暗い店のなかに明るい声が響く。

「どうも」

伴沢と丸井が「スナック容子」のカウンターに着く。

「あら、初めましてかな?」

「いえ」

薄暗くて容子はすぐに伴沢と丸井に気が付かなかった。

 

「何を飲まれます?」

「ビール」

「ウーロン茶ください」

丸井こう見えて酒豪。しかし、今も仕事モード。

 

(飲んでもいいんだよ)

(だって、仕事ですから係長)

「なにコソコソしゃべってるのかな~」

吼えている美魔女姿しか知らない伴沢は、フレンドリーに話しかけてくる容子に違和感しかなかった。

 

「はい、どうぞ。」

ビールとウーロン茶が出る。

「お二人はどういう関係?」

 

「シバヤマヨウコさんですよね。大和田市住民課の伴沢です」

「あら、住民課の係長さん」

容子はすぐにピンときた。

「このまえはちょっと怒り過ぎちゃって・・・」

名乗ったらまた怒鳴り散らすかもしれない・・・と思っていたが、意外と冷静でほっとした。

「いえいえ、こちらこそ、失礼があったことをお詫びします。お詫びに一杯いかがですか?」

「あら、じゃあ、私もビールにしようかな」

 

容子ママにお酒が入ったところで本題に入ろう・・・。と伴沢は思っていたが、

「お二人は付き合ってるの?」

「プライベートのことはお答えできません」

丸井は仕事モード全開。

「あら、秘密なのね~。よく見るとこの子、かわいいね。ウチで働いてくれない?」

「公務員の副業は禁止されています」

伴沢は丸井の模範解答に苦笑い。

「そんなに堅くならなくても・・・」

「今日はお詫びに来たんです!係長もしっかりしてください!!」

「マジメなのね。ますますウチで働いて欲しくなっちゃう。こういう清楚っぽい子に来て欲しいの」

「シバヤマさん、今日は謝罪に来たんです。」

と、ケーキを別の者が食べてしまったこと、連絡先は捨ててしまったことを説明した。

 

「じゃあ、あのおっぱいが大きい子が話していたことは本当だったのね」

「ええ。すいません」

「でも、こうやって謝りにくるのはえらいんじゃない?特にこの子」

「本当にすいませんでした」

「うちの秀吉ちゃんにはこういうマジメな子が合うと思うのよ」

「え?」

 

その瞬間、ドアが開く

 

「あら、センセイ、いらっしゃい」

「めずらしいな、こんな早い時間にもう客がいるなんて」

 

「おじいちゃん??」

「ん?若菜じゃないか?なんだこんなところで」

思わぬ来客に伴沢は慌てる。

 

「だれだ、その男は?」

「上司の伴沢です。丸井さんには大変お世話になっております」

「なんだ、住民課の係長さんだったか。うちの孫が世話になっておるな。」

「新人ながら彼女の仕事に対する真っすぐな姿勢は他の職員の模範です」

「そうか、そうか。若菜は昔からマジメだったからなぁ。ところで、こんなところで何をしているんだ?」

 

「実はね・・・」容子ママがいきさつを説明する。

その話を聞いた元議長は大笑いだった。

「容子チャンの息子も大胆なことをするようになったな」

「うちの秀吉ちゃんはチョット常識に欠けるのよね」

「そのくらいガッツがあった方がいいぞ。いまの若い男は草食系だかしらんが、もっと元気があった方がいい」

 

「そのことですが・・・。」

伴沢が話に割って入る。

 

 

「鈴木は今は妊娠中でして・・・。」

「えー!!美香さん妊娠しているの??」丸井は驚きすぎてウーロン茶をこぼしそうになる。

「あら、独身じゃないの?」

「ええ、ですから・・・」

「じゃ、秀吉ちゃんにはちゃんと言ってあきらめさせるわね」

「まだ妊娠初期だったので、見た目では分からないと思います」

「小野ちゃんにも言っておかないと・・・。」

「小野ちゃん?」

「ああ、市長のことだ。昨日言っていたあの件か。あいつはふんふんって聞き流してただけだぞ。」

「え?」

「市長に、鈴木と引き合わせるようにお願いしたのではないのですか?」

「あら、そんなことするわけないじゃない。ちょっと連絡するように言って欲しいって住民課長さんにお願いしたの」

「・・・そうだったんですか・・・」

なんだったんだあの江口のキレっぷりは・・・。

 

 

 

その後。

シバヤマシュウキチ君は姿を見せなかった。

 

それと。

「丸井さん、昨日の夜ことだけど。妊娠の話、アレ、ウソだから」

「えーーーー!!」

住民課職員全員が振り向く。

「もうさっき、『美香さん、おめでとうございます。辛かったら仕事変わりますからいつでも言ってください』って言っちゃいました」

「もう、言っちゃったの?」

うわぁ、これは怒られるぞ・・・。

「係長、ヒドイ!!」

・・・すまんな。

 

 

「係長!!」

うわぁ、美香さん、ごめん。

 

「係長、大変です。さっき戸籍をとった女性が、『婚姻届を出したのに、婚姻が載ってない』って・・・。」

 

(第1話 完、第2話へつづく)

 

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※ この話はフィクションです 

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