大臣が言ったところですぐにはムリ
河野大臣が「はんこなくしたい」「はんこ、すぐなくしたい」と印鑑文化に挑戦状をたたきつけると、ネット上では賛美の嵐のようですね。
しかし、カンタンにはいかないと思います。
リンク先が指摘するように、民法その他の法律を改正しなければならず、1か月程度ではとても無理だと思います。
ハンコが必要な場面を整理する
1.遺言や重要な契約、財産の譲渡、登記などの重要な場面
2.簡易な契約、申込などの認印でできる場面
3.組織内の意思決定の過程での場面(内部決裁など)
に分けられます。
1.遺言や重要な契約、財産の譲渡、登記などの重要な場面
これは、今すぐ印鑑をなくすることは不可能と断言できます。
重要な意思決定には印鑑証明書を添付する(つまり、実印を押す)ことが法令で定められている、または商慣行でルール化されています。これは、なりすましや偽装、錯誤などを防ぐ目的もあります。
「サインでいいじゃないか」という声もありそうですが、現在、印鑑証明書を取得できない海外居住者の場合を除き、本人のサインであることを証明する手段がなく、また、他人が偽装できないようなサインを書く訓練をしていない日本人には意思表示の手段としては不十分と言わざるを得ないのです。
(※海外居住者の場合、現地の日本大使館がサインを証明する制度「サイン証明」
2.簡易な契約、申込などの認印でできる場面
旧来から認印での押印を認めている書類は、徐々に「サインも可」とするものが増えています。印鑑を押すこと自体が軽微な行為では形骸化しており、政府が旗を振らなくても脱印鑑は進んでいると思います。
ただし、本人が自ら署名できない場合は、記名押印という方法で印鑑が残っていくのではないかと考えられます。
(署名と記名の違い)
署名・・・自らの手で自分の氏名を書く
記名・・・ゴム印などで氏名を記す。または代筆。
3.組織内の意思決定の過程での場面(内部決裁など)
行政文書は係員→係長→課長補佐→課長・・・といった形で組織の下部から順番に押印するのがルールです。想像ですが、これを電子決裁に一本化するという話ではないかと考えられます。
紙に印鑑を押すという作業が、パソコン上の「承認ボタン」をクリックすることに変わるだけで、実態をよく考えるとなんの効率化にもなってないような感じがします。
「はんこなくしたい」は利権?
商取引の印鑑をなくすとなると、電子証明が一気に拡大することになります。電子証明業者(G〇Oなど)が大きく利益をあげそうです。
一方で、旧来の印鑑業者は窮地に立たされることになりそうですね。
マイナンバーカードの普及も?
仮に印鑑証明を廃止するという話になると、変わって登場してくるのがマイナンバーカードになりそうです。
マイナンバーカードには署名用電子証明書というものが搭載されており、これは「印鑑証明と同等の公証力」があるとされています。
つまり、印鑑と印鑑証明書を同時に持っているようなものです。(ただし、パスワードがわからなければ使えません)
脱ハンコに乗ってマイナンバーカードをさらに後押ししそうです。
次回は、「はんこなくしたい」の影響を考えていきたいと思います。